ピン釘打機とは?

パス、パス、パスパス、、、、
スピーディーに隠密性の高いピンネイルが打てる電動工具。それが【ピン釘打機】。別名ピンネイラ、ピンタッカー。
【美しい仕上げ】と共に、【圧倒的な作業スピード】【正確性】をもたらしてくれる素晴らしい電動工具。
従来はエア式でコンプレッサーが必要だったけど、近年電動式も発売されてDIYと相性がすこぶる良くなった。
コンプレッサーという爆音器を用意できないDIYerの強い味方になってくれるはずだ。
DIYでの使用シーン

新たに何かができる工具っていうよりも、DIYのこまごまとした【ストレスの軽減】、【時短】、【美しさ】が手に入る工具だ。
- ビス、クギの跡がない化粧面にしたい
- 位置ずれ無く組付けたい
- 治具をスピーディーに作りたい
- 接着剤の硬化時間を待てない
- クランプできない構造の仮止め
ピン釘打機はノータイムでズレることなく材料の固定ができるのが最大の特徴だ。
ピンネイルは極細0.6mmであり、驚異の隠密性もあり仕上がりが美麗。
そして、作業シーンによっては、お世辞抜きに作業スピードは5倍速くなる。
工具の名称
詳しい紹介の前に、まずは各社でバラバラな工具の名称について、、、
同じピンネイルの電動工具でも名称が違う。
HIKOKI:ピン釘打機
マキタ:ピンタッカ
MAX:ピンネイラ
んだよもー、、、ってなっているのが現状。揃えてクレメンス。
しかも使用するネイルの種類でも名称が違う。
ざっと分類するとこんな感じ。
| 使用ネイル | ピンネイル | フィニッシュネイル | ステープル |
|---|---|---|---|
| 工具の呼称 | ・ピン釘打機 ・ピンネイラ ・ピンタッカー | ・フィニッシュネイラ ・仕上釘打機 ・面木釘打 | ・タッカー ・フロアタッカー |
特にピンタッカー、タッカーがややこしい。
【ピンタッカー】はマキタ【ピンネイル】用の工具。
【タッカー】は【ステープル】用の工具。
今回紹介するのはピンネイル用電動工具
全種類のネイルを一つの電動工具で使用することはできない。
今回紹介するのは最も隠密性が高く、DIYと相性が良い【ピンネイル】の電動工具になる。
打ち込むネイルの種類

| ネイル名称 | ピンネイル | スーパーフィニッシュ ネイル | フィニッシュネイル | ブラッドネイル | ステープル |
|---|---|---|---|---|---|
| 保持力 | 最低 | 低 | 中 | 高 | 最高 |
| 目立ちにくさ | 最高 | 高 | 中 | 低 | 最低 |
| 用途 | 接着剤併用 DIY、家具、額縁 | 内装、建具 | 内装、建具 | フロア、床 | フロア、床、布貼り |
保持力と隠密性はトレードオフ
上の図の通り、ネイルの太さと頭の大きさに違いがある。
材料を固定する保持力と、目立ちにくさはトレードオフの関係にあって、
ピンネイルは最も細く目立ちにくいが保持力が最弱。
接着剤との併用が必須になるけど、ネイルの頭が無いので隠密性は抜群に高い。
遠目からはまず見えることは無く、サンディングすれば近くてもほとんどわからない。
対極にいるのがステープル。
木工用のホッチキスで保持力最強だけど超目立つ。基本は目に見えないところに使うネイルになる。
よく使われるネイルは?
家具、額縁、小物には【ピンネイル】
建具、内装には【フィニッシュネイル】or【スーパーフィニッシュ】
床貼りには【ステープル】
個人差はあると思うけど、おおよそこんな感じ。
僕は家具サイズのDIYがメインなので隠密性が高いピンネイルを使っている。
布貼りなどの見えない場所にはステープルを使う。
フィニッシュネイルは一般的に呼称されているけど正確にはMAXの商品名。なので他社は仕上げ釘、超仕上げ釘で売られている。
ブラッドネイル、、、残念ながらあいつは廃れてしまった。メーカーのMAXも生産中止した。名前はカッコいいのにね。
使うメリットは?
ここからは実際に使った使用感を紹介したい。
見た目がキレイ
すごいきれいに仕上がる
これなんて近くで見てもピンネイルの跡が分からない。


ピンネイルでベニヤを固定して収納を作った時の写真。
サンディングすると自然な仕上がりを実現できる。右側に白いポツがかすかに見えるくらい。
コーススレッドや木ビスとは比較にならないくらいきれいだ。

サンディング無しでも目立たない。遠目ではまあ分からない。
クランプが不要

クランプが難しい長いベニヤ板の直角も簡単に組み付けできる。
引出しの箱組み、治具作成に重宝している。
ノータイム固定


ボンドが固まるまで待つ必要が無く、ノータイムで作業を続けることができる。週末DIYでは大きなメリット。
ボンドの乾燥を待つために翌週まで作業が繰り越しすることがなくなった。
ボンドを塗布して、ピンネイルをパスパスって打つだけで作業完了だ。
しかもズレない。クランプと接着剤の流動で頻繁に発生する位置ズレ。このストレスからの解放はうれしい限りだ。
引出し箱組みなんかは接着剤+ピンネイルで仮固定して、すぐにビス止めができる。
通常なら接着剤の硬化で翌日まで待たなくちゃいけない。時短効果はすごい。
圧倒的な作業スピード、時短

週末のDIYには大きなメリット
上の写真はフレンチクリートの工具収納なんだけど、ビスを使ったときと比べると作業時間は1/5になった。
ビスを使うと1時間かかるけど、フレンチクリートなら10分位で完成する。
クランプ、下穴、皿ザグリ、ビス止め、ビット交換が不要になるので、作業スピードが段違いに早くなる。
ビスの太さを考えなくていい

上の写真のような、ベニヤを縦に組み付けるときに、ビスの太さが問題になることが多い。
ベニヤが薄いのでビスが横から貫通したり、ビスが太いのでベニヤが膨らんでしまったりする。
ピンネイルならそんな心配もなくパスパス打つことができる。ストレスなく作業できるのも大きなメリットだ。
保持力は?
ピンネイルはネイルの中では最弱の保持力。5mmベニヤの場合、垂直に引っ張ると引っこ抜けてしまう。
結構な力はいるので、そう簡単には抜けないけどね。
強度的にはやはり接着剤の併用は必須。ピンネイルは接着剤が固まるまでの圧着と正確な固定が主な仕事になる。
横方向への力はまあ強い。鋼を切断するくらいの力が必要になるので、人間の力では無理だと思う。
保持力は材料の厚み、硬さに左右される
ピンネイルを打つ材料が厚いほどその保持力も向上する。
ベニヤ板も12mmくらいあれば、強い保持力を発揮してくれる。テコの原理で力いっぱい引っ張らないと抜けない。
また、材料の硬さでも保持力は違ってくる。ファルカタや桐のような柔らかい木材では保持力はかなり低下する。
反対にオーク、メープル、ビーチのような硬い広葉樹ではめちゃくちゃ保持力が強くなる。
ビーチに打ち込んだ25mmピンネイルはちょっとやそっとでは抜けなかった。体重を乗せてテコを使ってやっと抜けるくらい。
ハの字型で保持力UP

角度をつけてピンネイルを打つだけで、保持力が大幅にUPする。
5mmベニヤ板でもしっかり固定できる。
12mmベニヤ板ならもうガッチガチ。
なので僕は基本的に斜めに打つようにしている。
使い方


LEDで手元も明るい。
安全装置をOFF

安全装置をOFFにしないとトリガーを引くことができない構造になっている。
赤いノーズキャップを木材に押し当て、トリガーを引く
さらに赤いノーズキャップを木材に押し付けた状態でないと、ピンネイルは射出されない安全設計だ。


硬いビーチに2か所ピンネイルを打ち込んだ。木目に紛れてほとんど分からない。サンディングするとより隠密性が高まる。
硬いビーチでも反動は少なく、リズミカルにピンネイルを打ち込むことができる。
もちろんピン釘打機を逆さにしても使用できるのでアクロバティックな体勢もOK。
赤いノーズキャップは予備が1個付いている。
ノーズキャップが無くても打ち込むことはできるけど、打ち込み跡がちょっと目立つ。特に柔らかい木材では凹凸ができてしまう。
ネイルの補充

マガジンカバーのレバーを押しながら引っ張る

マガジンの中にピンネイルの向きを確認して補充する。

ピンネイルには▲で向きが印字されている。

カバーを締めて補充完了。
空打ち防止機能
ピンネイルの残弾が7になると、それ以上打つことができなくなる。
空打ちすると内部にある打ち込むドライバブレードが傷んでしまうからだ。
打ち込み深さ調整

打ち込み深さはマガジン裏側にある赤色のアジャスターで調整できる。アジャスタを1回転させると0.75mmずつ深さ調整が可能。
よほどのことがない限り調整することは無いと思う。今まで僕は調整したことない。
ドライバブレードの交換

簡単
ピン釘打機の内部にはハンマーのような金属プレートがある。名称はドライバプレート。予備が1枚付属している。
このドライバプレートはユーザーで簡単に交換できる構造になっており、付属の六角レンチで開閉ができる。旧式はメーカーに返却が必要だったみたいだけど、本機になって改良されたようだ。
交換は簡単で5分あれば十分。公式取説に詳しく交換方法が記述されている。
交換時期は玉詰まりの頻度が目安になるみたい。
僕は今のところ1000本くらい打っているけど、玉詰まりはゼロ。
おそらくDIYであれば数年に1度の交換頻度だと思う。
ピンネイルの長さと色 15~35mm

長さは15、19、25、30、35mm。素材は鉄orステンレス。
ピンネイルの頭部分の色も選ぶことができて、茶、うす茶、ベージュ、白、無地もある。
使用する木材の色に合わせて選ぼう。個人的には【うす茶】【ベージュ】どちらも隠密性は高いと感じている。
僕は15mm、25mm、35mmを常備している。
5mmベニヤにはL-15mm、12mmベニヤ同士ならL-25mmを斜め打ち、それ以外は35mm。
3種とも同じくらいの使用頻度。1パック3,000本なので、次買うのは数年後とかになるかな。
使用時の注意点
誤ってピンネイルを手に打ち込まないように注意しよう。
木材を手で押さえるときは、手の位置はピンの長さより離すことを心掛けている。
木目によってはピンネイルが曲がってしまい、木材側面から飛び出すことがあるからだ。

ピンが曲がりやすい方向

ピンネイルは左右方向に曲がりやすい。逆に縦方向にはほとんど曲がらない。
これはピンネイルの形状によるもので、ピンネイルの先端は円錐ではなく横側に角度が付いているからだ。
角度が付いている向きには木目の抵抗を受けてしまい曲がりやすくなる。
なのでピン釘打機の方向と木目は十分考慮しておこう。
SPFのような柔らかい針葉樹でも曲がるので、硬い広葉樹を使うときはなおさらだ。
バッテリー10.8Vをおすすめする理由
ここからは、ピン釘打機のバッテリー電圧に関しての話。
HIKOKIのピン釘打機には10.8V、18V、36Vの3種がある。
18Vは旧型でドライバブレードが交換できないタイプなので除外。
選択肢としては10.8V or 36Vの2種になる。
僕は36Vマルチバッテリーを持っているので36V仕様もありだったけど、結果は10.8V仕様を選んだ。
理由は
10.8Vは軽い!
からだ。
バッテリー電圧の違いは【連射スピード】
36Vのほうがパワーがありそうだけど、実は打ち込みパワーに差はない。
HIKOKI公式ドキュメントに記述されている通り、パワーに差はなく、連射スピードには差がある。
トリガーを引いてからのレスポンスは、36Vのほうが35%速い。それだけ。10.8Vでも十分速く、パスパス打てる。
DIYレベルで必要とされる能力ではないので、重い36Vを選ぶメリットがないのが実状だ。
電圧の大きさは打ち込むパワーと関係ない
では電圧の大きさは何に影響しているのか?
ピン釘打機はモーターが直接ピンネイルを打ち込んでいるのではない。スプリングの力でピンネイルを打ち込む構造になっている。
モーターはドライバブレードを押し込むスプリングの巻取りに使用しており、モーターパワーは巻取り時間に影響するだけで、その打ち込みパワーに関与していない。
なので10.8Vと36Vで打ち込める木材の硬さ、深さに違いはない。
フル充電で打ち込めるピンネイルの本数に差はあるけど、10.8Vでも4,000本打ち込める。オーバースペックだ。
軽さのアドバンテージ
そうなると電動工具の軽さが重要になってくる。
10.8V NP1235DA:1.9kg
36V NP3635DA:2.3kg
重さで約400グラムの差がある。アクロバティックな体勢で使う工具でこの差は大きい。
片手で扱うならなおさらだ。
DIYには10.8Vが良い
値段的にも10.8Vを選んだよ
10.8V仕様は、充電器1コ+充電器付きで4.5万円。
36V仕様は同セットで5.9万円。
んんん、、、10.8V!!
となり、最終的に10.8Vを選んだ。今のところ後悔はなく、軽いことは正義を体感している。
| 10.8V NP1235DA | 36V NP3635DA | |
|---|---|---|
| 重さ | 1.9kg | 2.3kg |
| 価格 | 4.5万円 | 5.9万円 |
それに10.8Vバッテリーは18Vシリーズの次にラインナップが豊富で、バッテリーを複数持っていても腐ることはない。
実際、僕はインパクトドライバーは10.8Vを愛用している。すごくいい。
まとめ
・ピン釘打機は「美しい仕上がり」「時短」「精度の高い固定」が魅力
・10.8Vの軽量モデルがDIYに最適
・クランプ不要で作業効率が大幅UPするので、週末DIYerの強い味方になってくれる。



