「最近、ニッパーが切れなくなってきた……」
「ニッパーがなんだか重い」
「パチッと切れなくなってきた」
ニッパーを使い込んでいると、切れ味の低下という問題にぶつかる。
結論から言うと、ニッパーは正しい手順を踏めば研ぎ直して切れ味を復活させることができる。
ただし、刃物の中でもニッパーは研ぐのがかなり難しい部類に入る。 適当に研ぐと一発でダメになることもあるのだ。
そこで今回は、ニッパーの切れ味が落ちる原因から、正しい研ぎ方の手順、絶対にやってはいけない間違ったメンテナンス方法まで分かりやすく解説する。
ニッパーを研ぐと切れ味は回復する?

すごく切れるようになる
インシュロック(結束バンド)の切断面を比較したものが上の写真になる。
左がニッパーを研ぐ前。
ぐにゃッとした感触で力いっぱい握る必要があった。切断面はギザギザで一部が無理に引きちぎったような状態。
右が同じニッパーを研いだ後。
スパッと軽い力でカットできた。切断面は均一できれい。
難易度は高め
ザクザク切るタイプのニッパーは研ぎやすいけど、ミニチュアニッパーやプラモ用のフラット刃を研ぐのはけっこう難しい。
初心者の方は、捨ててもいいニッパーで試すことをおすすめする。
そもそもニッパーの切れ味が落ちる原因は?

ニッパーの切れ味が悪くなる原因は主に3つ。
- 刃の摩耗(丸まり)
- サビ
- 刃こぼれ(欠け)
金属やリード線を切るたびに、刃先には強い負担がかかる。 長期間使っていれば摩耗して刃先が丸くなるのは当然だ。
これはプラスチックや樹脂を切るときでも同様。
また、湿気によるサビ、太すぎる線を無理やり切る、こじることによる刃こぼれも切れ味を大きく落とす原因になる。
アルミホイルを切る・お茶碗の裏で研ぐのは効果があるのか?
ネットでよく見かける「アルミホイルを切ると切れ味が戻る」「お茶碗の裏(高台)で研ぐ」という裏ワザ。
一時的な効果はある。
アルミホイル(アルミ箔)は、刃先の汚れ、のり、サビを落としてくれるので切れ味が一瞬だけ回復する。
アルミが刃の微細な欠けを埋めるといううわさがあるが、アルミの融点は660度である。
アルミを切ってそんな高温にならないし、なっても都合よく欠けている部分だけを埋めることはないだろう。
そもそもアルミはすごい柔らかいので、欠けを埋めたところですぐにダメになる。
お茶碗の裏で研ぐのは、砥石の代替なので一時的に切れ味が回復するのは事実。しかしちゃんと研ぐことはできないのですぐにダメになる。
料理中に包丁を研ぐには全然使える。僕もやることがある。お行儀は良くないけど。
大事な道具を壊さないためにも、ちゃんとした工具を使って研ぐのがいい。
ニッパーを研ぐために必要なもの

ニッパーの研ぎ直しに必要な道具は以下の通り。どれもホームセンターや100均で揃うものばかりだ。
- KURE 5-56(潤滑・防錆スプレー)
- 紙やすり(#180〜#320程度)
- ダイヤモンドヤスリ(細目)
- ウエス(ショップタオルなど)
潤滑スプレーはクレ556でなくてもOK。潤滑と防錆ができたらいいので機械油でもいい。
紙やすりはニッパー全体のサビを落とすのが目的なので番手は適当でいい。#180~240がやりやすいと思う。
ダイヤモンドヤスリは刃を研ぐために使うので、目の細かい細目を使おう。粗いと刃を削りすぎてしまう。
あとは掃除用のウエス。古いTシャツでもなんでもいい。
砥石でも可

本格的に研ぎたい場合は「小型の砥石」を用意しても良いが、扱いが簡単なダイヤモンドヤスリがあれば十分だ。
僕はカンナやノミを研ぐときに、たまーにニッパーも研ぐことがある。
気合を入れて研ぐので、砥石で研ぐのはアルティメットニッパーくらいだけど。
100均ニッパー、電工ニッパーはもっばらダイヤモンドヤスリで研いでいる。
ニッパーの正しい研ぎ方【5つの手順】

それでは具体的な手順を解説する。 作業時は安全のため、怪我に十分注意してほしい。
手順1:全体にKURE 5-56をスプレーする

まずはニッパー全体にKURE 5-56を吹きかける。
固着した汚れや油分を浮かせて、全体のサビを落としやすくするためだ。
また、駆動するカシメ部の古いグリスも洗い流せる。
スプレーしたら5分くらい待って、潤滑成分がなじむのを待とう。
手順2:全体のサビを紙やすりで落とす(#180〜#320)

#180〜#320くらいの紙やすりを使い、刃先以外の全体に浮いたサビを落としていく。
紙やすりが目詰まりする場合は耐水ペーパーを使おう。
ゴシゴシ削るというよりは、表面の茶サビを磨いて落とすイメージ。

全体を軽くサンディングするだけできれいになる。
手順3:片刃ずつダイヤモンドヤスリで研ぐ
刃を開いて片刃ずつ研ぐ

ここで一つ、重要な注意点がある。
「ニッパーを閉じた状態」で研いではいけない。必ず開いた状態で研ぐこと。
ニッパーの刃は閉じたときに刃先同士が正面からぶつかって潰れないよう、ほんのわずかにかみ合わせが調整されている。
ニッパーを閉じたまま研いでしまうと、この絶妙な段差がなくなり、刃同士が衝突して消耗しやすくなる。
なので刃の耐久性が低くなり、すぐに切れなくなる。
刃先に向かって一方向に研ぐ

刃を研ぐ方向は上の写真のように刃先に向かって一方向に研ごう。
ゴシゴシ往復させるのではなく、刃先に向かってスーッと一方向に滑らせるのがコツだ。
ニッパーの刃の形状で研ぎ方を変える
刃の形状には種類があり研ぎ方が違うよ
強力刃(両刃)を研ぐ場合

電工ニッパーなどのようなザクザク切るニッパーは「強力刃」と言って、両面が鋭角に刃がついている。両刃ともいう。
この強力刃の場合はニッパーの表・裏共に同じように研ぐ。
100均は強力刃タイプのニッパーがほとんどだ。
薄刃(フラット刃、ラウンド刃)を研ぐ場合

ニッパーの表面がピッタリしており、ツライチになっているようなフラット刃、ラウンド刃の場合は片側を重点的に研ぐ。
ノミを研ぐ時と似ており、表側のフラットな面は最後に軽くなぞるくらい。
上の写真だと赤色の矢印側を先に研ぐ。そうするとフラット面側に「返り」という目に見えないバリが発生する。
そのバリを取り除く目的で、サッと軽くなぞるくらいやすりを当てる。もしくは紙やすりでサッと拭くくらい。
この薄刃は研ぐのが難しい。研ぎすぎてしまって、刃がガタガタになりやすい。研ぐなら慎重に作業しよう。
手順4:仕上げの清掃と防錆処理
削りカスをウエスできれいに拭き取り、仕上げにもう一度KURE 5-56を全体に吹きかける。
KURE 5-56は刃の表面の水分を置換して、その下に防錆成分と潤滑成分をコーティングしてくれる。
ノミやカンナに使う椿油などの刃物油でもOK。
以上でニッパーの研ぎ直しは完了だ。
ニッパーを研ぐ際の注意点
自分で研ぐ場合は、以下のリスクを頭に入れておいてほしい。
- 刃を研ぎすぎない(修復不能になる)
- 刃の欠け(刃こぼれ)を素人が完全に修復するのは難しい
- 新品時に比べると、どうしても耐久性は落ちる
- 刃の形状で研ぎ方を変える
刃物屋さんのように精密に研ぎ上げるのは、僕らDIYerには難しい。
失敗して軸がズレてしまうリスクもあるため、「最悪捨てる予定のニッパーなら試してみる」くらいのスタンスで臨んでほしい。
ニッパーは買い替えるほうがいい場合もある
素人が研いだニッパーは切れ味のムラが出やすく、作業効率や作業品質に影響してしまう。
メンテナンスにかかる手間と時間を考えるとコスパはあまり良くない。
2,000円前後あればいいニッパーが買えて、数年はノーメンテで快適に使える。
特に薄刃(フラット刃)は僕もあまり研がない。買い替えることが多い。
まとめ:研いでみるのもあり
ニッパーの研ぎ方をまとめると以下の通り。
- アルミホイルや茶碗裏での研ぎ直しはNG
- ダイヤモンドヤスリを使い、1方向に軽くなぞる
- 必ずニッパーを開いた状態で片刃ずつ研ぐ
- コスパはあまり良くない
「ダメ元で研いでみよう!」という場合はぜひ今回の手順を試してほしい。 もし作業の精度やスピードを重視するなら、思い切って新品の高品質ニッパーを手に入れて快適なDIYライフを楽しんでほしい。

